は完全にゴルフというオハジキである。しかし彼らは結構ゴルフをたのしんでいる。
「チェッ! ソケットしたか!」
 とか
「チェッ! トップした!」
 などとゴルファーらしい英語をしゃべることも心得ているが、タマをころがすのにソケットもトップもありゃしない。見物している方もとてもたのしいのである。工員ゴルフ大会というのも時々あるらしく彼らの練習は熱心である。
 ここではキャデー(ゴルフの棒をかついでくれる少年)が一時間十円である。私がここの会員になったとき、世話役の人から
「子供にお金をよけいやって値段をつりあげないように」
 と厳重な訓令をうけた。しかし私はお金をよけいやるどころか、なるべくキャデーを使わないことにしている。なぜなら棒は三、四本ですむのだし、子供たちは十円のアルバイトに情熱をいれていないから、タマの行方なぞ見ていない。彼らをあてにしているとタマが行方不明になる率が多いのだ。タマは五百円もするのだから、これほど割に合わないことはない。そのうえ
「夕刊配達の時間だよオー」
 と母親が門の外から声をかけると、子供は棒を投げすてて走り去るので、ここでキャデーを使うのはむしろ悪趣味
前へ 次へ
全34ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング