で、もともと工場の庭にすぎないのだから、全部で高校の運動場ぐらいの広さしかない。そこへ百五十ヤードを筆頭に、百ヤード前後のコースを六つもつくっているのだ。それでもアプローチという近距離の打ち方やバンカーという障害物からの打つけいこはできるから、私も仲間にいれてもらった。この会費は月に二百円である。
三時のポーが鳴ると工員たちが手に手にゴルフの棒を三本ないし一本握ってかけつける。三、四名ずつそれぞれの芝生をとりまいて、近距離打と芝生の穴へタマをころがしこむ練習をはじめる。全力でかっとばすには先生についてフォームを習う必要があるが、このコースではその必要がない。なまじ私などがかっとばすと障害に落ちる率が多いのだ。彼らははじめからころがす。どうころがしても次には近距離打になり、その方が障害に落すことも少ないのである。タマをころがすのや、近距離打や、芝生の穴へ落すのは自我流でできる。練習量だけで結構いけるものである。だから、このコースでやる限り、彼らのうまさはすばらしい。プロも勝てないのである。なぜならプロは障害へ落すが彼らは二度ころがして三度目にたいがい穴へ落すことができるからである。それ
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