すな押すなだよ。無料のテレビがあるからさ」
ちまたの消息通だけあって、うまいことをいう。これは桐生に限らないだろう。日本人の多くの人々がせめて自宅の茶の間でテレビをたのしむ生活がしたいと考えているに相違ない。しかし思えば文明も進んだ。自宅に好むがままの芸人や競技士をよんで楽しむことができたのは王侯だけであったが、いまやスイッチをひねるだけで王侯の楽しみができる。天下の王侯も今ではたった二十万円かといいたいが、あいにく拙者もまだ王侯の域に達していないのである。
「数年のうちにすべての家庭にテレビを」
と約束してくれるような大政治家が現われてくれないものかと思う。民衆の生活水準を高めることを政治家の最上の責務と感じる人の出現ほど日本に縁のなかったものはない。
しかしフハイダラクの底をついた現代はかかる大政治家を生み育てる温床ともなりうる時代なのである。歴史がそう語っている。しかし日本だけはフハイダラクのしっ放しの感なきにしもあらずか。
スコア屋でないゴルフ
足利市に東京繊維という工場がある。その庭では野球やサッカーと一緒にゴルフもやれるようになっている。といったところ
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