のおびただしさ、目まぐるしいばかりである。同行の女房は仰天して、
「芸者総あげね。こんなすごいお花見はじめて見た。桐生のダンナ方のことだから、これで千円ぐらいの会費であげてるんでしょうね」
「そんな他国なみの入費をかけるものか。しかし、七百円以下には値切れそうもないが、案外五百円ぐらいかも知れないぜ」
「まさか」
あとでダンナの一人にきいてみると、
「ああ、あの会費、四百円」
★
アンマの家から電話がかかってきた。ウチのアンマはまだそちらですかときく。二時間も前に私の家をでたのだ。盲人のアンマだから私も心配になって、散歩がてら出てみると、パチンコ屋からツエをたよりに出てくるアンマにぶつかった。私もあきれて、
「お前さん、パチンコやるのかい」
「通りすがりにあの音をきくと、ついね」
全然人なみの涼しい返事である。
「今日は何列目の左側の何番がよくでるね」
と私に伝授よろしくゆうゆう御帰館だ。とかくアンマが目アキの口をききたがるのは承知の上だが、実際にパチンコをやるとは知らなかった。
私がこの話を人に物語ると、これがまた意外の衝動をまき起したのである。
「
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