すれば隣人の目の玉もぬく機敏さが露骨で、むしろ好感がもてるのである。だからこのダンナ方の共同作業の場に関する限り、諸事安あがりはなはだしい。
 昨年この町にゴルフクラブができ、私もすすめられて入会した。私がゴルフを覚えたのはこの町のおかげであるが、この会費が月に百円である。しかるべきインドアの練習場が新設され、備えつけのクラブとボールがあって、手ブラででかけて毎日存分に練習することができる。それで月に百円だ。ゴルフが金持の遊びだなぞとはよその国の話で、この町ではパチンコの方がよほど金がかかる。
 この市の中心に小さいながらも完備した市営の子供遊園地があって外来者の感服の的であり私も大そう感服していたが、桐生のダンナに言わせると、必ずしもそうでないらしく「子供を二人つれて行くと、あれにいくらかかって、これにいくらかかって、合計三百円、高くついて困るよ」
 ダンナのゴルフから見れば諸事高くついて困るのは当り前だ。
 去年公園へ花見に行ったら何かの団体が紅白の幕をはりめぐらして盛大にお花見をやっていた。幕のすき間からのぞくと二百人ほどのダンナが折詰に二合ビンで打ち興じ、酒席を往復する芸者の数
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