え? なんだって?」
 長平は委細かまわず居室へもどって、名刺に書いた。
 ――名刺持参の者に御引見の栄をたまわりたし。梶せつ子様。
「利くか、どうか。関所のニセ手形だよ」
 と、青木に渡した。

       四

 せつ子は応接室へ現れて、青木を認めると目を光らしたが、すぐふりむいて、受付の小女をよんで、
「この名刺の人は、どの方?」
 応接室には幾組もの人々が立錐の余地もないほどつめこんで、モウモウたる紫煙をふいている。受付の少女が指したのは、意外にも、青木その人であった。
 せつ子はすぐさま肚をきめて、驚いた風もなかった。
「出ましょう」
 青木を外へ連れだした。
「大阪旅行が、とても、うまくいったのよ。後援して下さる方が現れてね。独立できることになったの。その代り、大阪へ移住することになるらしいのよ。関西の実業家は太ッ腹で、話がわかって、たのもしいわ。でもね。個人的な後援者がハッキリしてるんじゃなくって、ある事業団体が後楯というわけなのよ。青木さんにはお気の毒ですけど、相手が事業団体でしょう。行きがかりがどうあろうとも、他人の共同出資を認めてはくれないのね」
 せつ子はデタラ
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