れ目から、身のこなしの節々から、内心の苦悩が、傷口からの血のように、ふきでている。
 長平は無関心に、
「ぼくはね。今夜、梶せつ子に会うよ。まったく、池の中へ石を投げているのだろうよ」
「フン。どこの池にでも石を投げてくる人だよ。ルミ子さんの池にも石を投げてきたんだってね」
「君は素人の山登りなんだな。天候を見て、下山することを忘れているんだ。アッサリ遭難しちゃア、つまらない話だな」
「往生際はわるいらしいがね」
 青木は帽子をつかんで立ち上った。
「可愛い、虫も殺さぬ面相をしてさ。食えないねえ、ちかごろの子供は。あの北川少年のことさ。梶せつ子が帰京してるなんて、鵜《う》の毛ほども覗かせやしねえや。お仕込みがよろしいからな」
 苦笑して、ふりむいて、
「じゃア、失敬。今日は退散するが、又、会うぜ。往生際がわるいんだから。京都で、門前払いは罪でしょう。ねえ、長平さん」
 長平は答えなかった。青木が靴をはき終るころ、
「梶せつ子に会っても、ムダだな」
「え? なぜ?」
「ふ。そうかい。是が非でもかい」
 長平はにわかに肚をきめたらしく、
「よろしい。梶せつ子に会えるようにしてあげよう」

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