ザンの酷薄なるものに、ジッとこらえていられるのは、拙者、つまり蛙、イケシャアシャアね。それあるのみさね」
せつ子はちっとも騒がず、
「そう。記代子さんを無事保管していただいて、ありがとう。いま、どこにいますか、記代子さんは」
「その御返事はハッキリおことわり致しますよ。彼女は、あなたとは縁なき衆生です。たぶん、ぼくと彼女とも、多かれ少なかれ縁なき間柄であるらしいようですがね。念のために、それだけはお伝えしておきます。ぼくは彼女を路傍の一人として保護いたしておるにすぎません。今や、なんの親密なる関係もありませんや。ぼくは只今より彼女を京都の叔父なる人のもとへ送りとどけてきます。その旅装のために戻ってきたのです。彼女は今夜は京都の叔父のもとに無事安着するに相違ありませんから、だまって引きとっていただきましょう。言語無用。だまったり。だまったり」
八
せつ子は事の判断に於ては、感情に走ることはなかった。青木の意向が、記代子を無事長平のもとへ送りとどけることに専一であると見てとったから、
「わかりました。本当にお世話様ですね。では、御手数でも、おねがい致しますよ。大庭先生
前へ
次へ
全397ページ中366ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング