と長平がとり交した「ツイデ」に関する論争などは、彼女には論議の因にならない。彼女自身は行えば足りて、他人のことはどうでもよかったからである。
そのせつ子も、放二の病床を訪ねることと、そして長平に会うことには、気が滅入った。パンパン宿にすみついて、一向に外へも出たがらない長平がバカバカしいからであった。
せつ子は青木から長平を訪ねてきての報告をきいて、
「そのパンパンは可愛いい子?」
青木はモッタイをつけて、
「左様。戦後のプロスチチュートは、美貌と同時に学があるね。未熟な芸をひけらかして、古風な型にはまった芸者などにくらべると、身に即した独自な見解をもっていて、甚だイキのよい生物ですな。その中で特に傑出しているのがルミ子というパンパンで、美貌に於ても、独自の見解に於ても、各界の一流の女傑に比して遜色ないほど、一家をなしていらせられるです。あの子の十九という年齢について考えると、他の女傑は、大そうムダに時間を費したものだなと考えさせるところがあるね。女傑は貞操をすてることによって、頭脳的に成育する時間を甚だしく短縮すると見ましたが、どうですかな?」
せつ子は顔をそむけて、青木を退
前へ
次へ
全397ページ中329ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング