た。それを悔いてはいなかったが、殺されてもこの男には許してやらないということが、最後の償いのように思われた。
 ルミ子はむしろ殺されることを望むような気持であった。すすんで獅子の前へ進みでる勇気がわき起っていた。
 ルミ子は立って、ネマキをぬいで、着物にきかえた。シゴキを一本、エンゼルの前へ投げだして、坐った。
「殺してごらん。私のクビを、しめてごらんよ。人殺し、なんて、叫びたてやしないから。音をたてずに、死んでみせるから、安心して、しめてよ。ちょッとした呻きぐらい、でるかも知れないけど、ウンと言ったわけじゃないから、まちがえないでおくれ」
「フ」
 エンゼルは口にふくんだビールを、いきなりルミ子の顔へふきつけた。ルミ子の顔は、うしろへ一分ひく様子もなかった。
 エンゼルはビンタをくらわせた。ルミ子の上体がふらついたが、倒れなかった。そこで、つづけさまに往復ビンタをくらわせた。左へふらつくと、右へ叩き返され、右へ傾くと、左へ叩き返された。
 しかしルミ子は痛さというものを全然感じなかった。彼女の全身にみちあふれているものは、決意だけであった。
 エンゼルは手をやすめたので、
「卑怯者。
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