でも思っているの?」
 ルミ子は起き上って、坐り直した。彼女は次第に亢奮していた。
 たかがヨタモノの脅迫ぐらい、気にするほどのこともない。それも女を口説いての凄文句にすぎないのだから、ムキになるのは、相手の術中におちこむようなものである。
 しかし、放二が殺されるという事柄について考えると、凄みを並べたてるだけのコケおどしかも知れないけれども、我慢ができなくなり、全身が熱くなってしまうのだ。
 ルミ子の目が吊った。ふだんと、まるで人相がちがって、赤いホッペタの童女が、怒って、白くなったように見えた。
「誰が殺されたって、お前なんかに、ウンと云うもんか。嘘か、どうか、ためしてごらんよ。私を殺してごらん。ウンと云うか、どうか。今、やってごらんよ」
 自分がここで殺されれば、エンゼルは捕まるし、放二に迷惑はかからない、ということが、誰に知られなくとも、ルミ子には悔いはなかった。
 彼女はムチャクチャにエンゼルが憎かった。放二をヨタモノなみにしか見ることができないような男、たかがパンパンとの一夜のために放二を虫ケラのようにヒネリつぶそうと思うような男。彼女はどんな男にでも、金で肌をゆるしてき
前へ 次へ
全397ページ中265ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング