にはピストルのようなものがあって、ただ軽率に血を見ることを好まなかったのかも知れない。あのヤサ男の静かな落付きは尋常ではない。エンゼルはそれを軽視することができなかった。世間知らずの記代子などには、あのヤサ男の正体が分るはずはないのである。
そう気がついてみると、ルミ子という女も、さすがに、ただのパンパンとはちがう。邪教の一味は、小娘のパンスケまで、ミコだか狐つきだか分らないが、老成ぶって、得体が知れないのである。
「お前は、いくつだ」
「十九」
「フ。どうだい。オレが北川を殺したら、どうする? お前、オレの女になるか」
エンゼルはビールをなめて、面白くもなさそうに、せせら笑った。
ルミ子の顔色は変らなかった。
「なぜ殺すのさ」
「なに、下駄につかえた石ころをはじくようなものだアな。誰かが、ちょッと、どこかの街角で、あの兄さんを眠らしてくれらア」
「全然、タダのチンピラだ」
ルミ子はガッカリして、ねころんで、片肱を枕にエンゼルを見つめて、つぶやいた。
「屋敷もちの花つくりのアンチャンも案外だなア。よくお金モウケができたわね」
八
「誰か殺せば、女がウンと云うと
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