っていると、
「私、先生にお目にかかりたいわ。いま、上京してらッしゃるんですッてね。でも記代子さんがこんなで御忙しいでしょうし、遊びにきていただけないでしょうね」
「記代子さんのことでお忙しくはありませんが、お仕事でお忙しいと思います。上京中、外出なさることは殆どありません」
「私がお訪ねしてはいけないの?」
「その御返事は、ぼくにはできませんが、宿を知らされた特定の人が訪ねる以外はお会いにならないのが普通です」
 礼子も思いきりよくあきらめて、
「時々、遊びにいらしてよ。遊びにきてらしてたら、記代子さんにも会えたのよ。はやく、行方、見つけてあげてね。そして、記代子さんを幸福にしてあげて」
 礼子はそれを心から期待しているようだった。


     青木の場合


       一

 記代子の失踪をきいたとき、青木が直感したのは死であった。
 しかし、記代子に、死を選ぶような素振りがあったわけではない。むしろ、怪しい挙動のなさすぎるのがフシギなほどであった。
 悲しくて、怪しいのは、青木の方であった。罪悪感にさいなまれ、行末を案じ、一人でいると、絶叫したくなり、胸をかきむしりたくなる
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