ことがあった。記代子と会うと、逆上的なものはおさまって、平静で柔和になるが、骨がらみの暗さ悲しさはどうにもならない。記代子の気持をひきたて、力をつけてやろうとして、いつとなく悲しい思いに走っているのは彼自身であった。
男の方がそんな風にダラシないから、記代子が逆に、青木の前ではノンビリしていたのかも知れないが、案外シンは頑固で、一人ぎめで、それで楽天的なようにも見えた。
青木は、記代子の将来を考えてダタイをすすめたいのであるが、記代子の反対は強く、青木は再々云いだすことができなかった。
失踪前も、特別な挙動があったとは考えられない。二人の仲はいつもと変りがなく、ちょッとしたイサカイもなかった。いつまでも捨てないでくれ、とか、いつまでも愛してくれ、というようなことを言ったこともない。青木がたよりない思いをさせられるほど、淡々と、ノンビリしていたのである。
しかし、死というものが、どこに宿るかは見当がつかない。ノンビリと、鈍感な田舎者の魂にも、だしぬけの死が宿りやすいことは、チエホフが書いていることだ。これぐらい妙な友だちはない。めったに訪ねてこないけれども、訪ねてきた時は親友で、
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