れが梶せつ子とは。言葉の様子では、どうも、そうらしい。
「あなたが梶さんでしたか」
「ハイ。どうぞ」
 と、せつ子はコニャックをつぐ。つぎ終ると、
「お気に召すほどのオモテナシはとてもと存じますが、どうぞ、ごゆっくり」
 軽く、しかし、丁重に一礼して、すぐ立ち去った。管々《くだくだ》しいことは一切ぬき。ただ存分に遊んでくれという神妙な風情である。そして、軽快な、行き届いたゆかしさがしのばれるような風情である。
 せつ子に代って他の芸者たちが交々《こもごも》さす。酒もあれば、ビールもある。
「いろいろと、そうは、のめないよ」
「これは酔心の生一本だそうですけど」
「ほう。日本酒まで珍しいな」
 芸者の人数が多すぎて、一々個別的な応対はしていられない。ローソクの明りが薄暗いせいもあるが、多勢に無勢、一々の美醜を念頭にとめるヒマもない。半玉が一人。若い美人も、婆さんも、年増もいるし、洋装も三人いる。

       七

 長平は酔った。彼はほとんど用心を忘れていた。ニセ手形の件も、それほど気にかけてはいない。何かの反響はあるはずだし、この一風変った趣向も根はそこにあるのかも知れないが、何が
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