まれて、酒をさされていた。一時にワッと、無言の酒肴に襲われたような有様であった。
「先生は洋酒がお好きとうけたまわりましたが、どれがお気に召しましょうか」
 芸者はテーブルのかたえから用意の洋酒をとりだして見せる。ジョニーウォーカア。ナポレオンのコニャック。その他、シャンパン、アブサン、ジン。いずれも然るべき品物らしく、敗戦国で拝まれるのがフシギの品々である。
「コニャックは珍しいな。十何年ぶりの再会になるだろう。これを、もらいましょう」
「ハイ」
「時に、ローソクは、どうしたわけですか。今日は東京の停電日ですか」
「いいえ。なんのオモテナシもできませんので、趣向したのですけど、先生のお気に召しますか、どうか。開店二日目の記念日なんです」
「このお店は今まで休業ですか」
「いいえ、私自身の開店記念日。大庭先生を招待させていただくのは、身にあまる光栄でございます」
 長平は驚いて芸者を見つめた。芸者か、店の女将かと見ちがえたのは道理である。洋髪ではあるが、場所柄では素人とはうけとれぬ和服。五尺五寸にちかいかと思われる長身が一きわ目立っていたから、この女の出入には特に目をひかれていたが、こ
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