とびだしても、成行にまかせて、ただ見ていればよろしいという考えである。
 やがて少女が座布団をひきずるように現れて、広間の下座正面へ置きすてて去ると、ヤブニラミの妙な男がチョコ/\とローソクの影をくぐるようにとびだしてきた。キチンと坐って、オジギをする。落語なのである。
 詩のようなものの朗読にはじまって、ランランラン、ラララと唄って、賑やかなこと、満座は抱腹絶倒、長平も例外ではない。涙がにじむほど笑い痴れた。しかし、
「こんな顔は珍らしいですなア」
 と云って、落語家が目玉をクルクルやると、薄暗がりというものは、演技と現実が分離して見える。おかしさに変りはないが、この顔で苦労しました、という因果物的なイタマシサが、見物人の笑いのあとに残るのである。明るい電燈の下とは違う。
 落語家が去ると、いつのまに来ていたのか、せつ子が長平に寄りそうように坐っていて、
「御多忙の先生はアプレゲールの寄席など御立寄りの機会もあるまいと思いまして、よんでみましたが、ガサツで、おきき苦しかったでしょう」
「いいえ。ごらんの通り、抱腹絶倒、戦後これほど笑ったことはありません」
「そうですか。では、ほかに二
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