い。おまけに、ズロースや腰巻などゝ適切なカイギャクを弄して、マヌケの上に怪《け》しからぬ根性に至るまで心ゆくまで飜弄しつくして退散しているのである。
しかし、考えてみると、今までにこういうことが起らなかったのがフシギなのだ。ろくに稼ぎもないくせに、ムダ食いやムダ使いがやめられない五人の宿なしパンパンが、今まで泥棒しなかったのが珍しい。
放二をめぐる生活の雰囲気が、彼女らの情操を正しく優しくさせていたと見るのは当らないようだ。盗みをしない方が、確実に生活安定の近道だったからである。雰囲気などゝいうものは、その安定を見定めた上で現れてくるセンチな遊びにすぎない。
盗みをはたらく条件をそなえている人間が、雰囲気の中で妙にセンチにひたっているよりも、盗みをした方が清潔かも知れない。ヤエ子の大胆不敵な盗みッぷりから判断しても、こう判定せざるを得ないのである。雰囲気などというものは、実際は無力なものだ。
しかし、ついに雰囲気がくずれたこと、つまりは生活安定の見透しがくずれたということについては、それが人生の当然ではあるが、無常を感ぜずにもいられない。
放二の息のあるうちに、それが行われるというのは、まことに皮肉でもあるし、滑稽でもあるが、これが放二の善意に対する当然な報酬かと考えると、悲痛な思いにうたれもした。
彼の冷たい判断からでも、放二の善意を若気のアヤマチと言いきれはしない。感傷とは言いきれない。しかし、たとえば彼の善意が神につぐものであったにしても、その報酬がこんな結果に終るというのは、人間の世界では当然すぎるのだろう。そして、放二は、それにおどろくような男ではなかろう。彼はほぼ全てのことを知っていた。
長平は放二のとこへイトマを告げにでかけた。
「どうだい。いっそ、御一統に自由に解散を願ったら。一葉落ちて、秋来れりさ。一葉ずつ、妙な落ち方をさせない方が、サッパリしてよかろう」
こうズケズケ言うと、放二は笑って、
「先生は貧乏人の心境をお忘れですね」
「そうかい」
「宿がないということと、タヨリがないということは、やりきれないことなんです。ギリギリのところへきてしまえば、自然に何とかなるものですが、さもなければ、解散しても、結局ここを当てにすると思います」
「なるほど」
「人間は、すすんで乞食にはなれないのですね。三日やればやめられないと分っていても」
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