く彼女らの後姿をうかがっていた。
ルミ子が自分の部屋へもどって、オフロ道具をかかえて、彼女らを追うて去る姿を見ると、ヤエ子はようやくホッとした。彼女らの姿が見えなくなり、しばらくしても戻ってこないのを認めて、ヤエ子は便所をでた。そしてルミ子の部屋の戸をあけた。
「ルミちゃんの着代え、とりにきたのよ。オフロ屋の前のドブへはまっちゃッたのさ。トンマなヤツなのさ」
ヤエ子は長平の存在などは、眼中になかった。パンパン宿へ一週間も泊りこんでいるジジイに利巧な奴がいる筈はない。助平の甘チョロにきまっているのである。
ヤエ子は押入をかきまわした。行李が一つある。彼女はそれを、ゆっくりと、五分ぐらいも、中身をしらべていた。
「なにをしてるんだ。早く着代えを持って行ったらどうだ」
長平がジロリとふりむいて言っても、ヤエ子は平気であった。
「ちょッと中身を見ているのさ。あんまり、たくさん持ってるから、目がくらまア。コチトラは着たきり雀だから、ビックリすらアね。へ。ずいぶん派手に、買いこんでやがら。パジャマ三枚もってやがら。人をバカにしてやがるよ。コチトラ、シュミーズの着代えもありゃしないよ。ズロースもね。エッヘ」
最後のワイセツな言葉と笑いは、長平にあびせかけたものである。
とうとう虎の子のありかを探しだした。銀行の通帳と一万円余の現金であった。彼女は行李の中のものを片づけて、
「これがキモノか。これがジュバンだ。このフロシキに包んでやれ。ヘッ。ズロースと、お腰も持ってッてやろうかな」
と、又、長平に嘲笑をあびせかけて、包みをかかえて悠々と消えてしまった。
風呂から戻った一同は、これを知って、被害者のルミ子よりも顔色を失った。
ヤエ子の宿命と自分たちの宿命が、遠く離れたものでないことを、彼女らは身にしみて知っていたからである。ヤエ子は追われて立ち去ったのだ。追われる圧力を彼女らも身にしみている。まだしもルミ子の物を盗んだヤエ子は賢明だ。彼女らの心にうごいたものは、羨しさであった。
十二
長平はヤエ子の泥棒ぶりに感心した。よほど天分があるようだ。痛快になめられたものであるが、腹をたてる余地がない。
彼の存在を眼中になく、行李をあけて十分ちかく金品を物色した落付きというものは、水際立っている。このとき彼の存在というものは、地上で最もマヌケ野郎に相違な
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