んて、そんな自分勝手な、自分だけ絶対に偉いようなことを仰有って」
ルミ子は自分がとりのぼせているのに気がつくと、自分のノドを手でおさえて、あきらめたように沈黙した。又、ふと、顔をあげて、医師を見つめて、
「先生。奇蹟は、どこにでも、あります。情熱の中にあるのですわ。先生が治してあげようと信じて下されば、奇蹟はあるかも知れないのです」
「そう。ぼくの言いすぎでした。毎日きて、できるだけの手当をつくしますから、安心なさい」
長平一人を相手のつもりで腹蔵ない意見をのべていた医師は、伏兵の爆撃におどろいたが、世なれた態度でルミ子を慰めてやることを忘れなかった。
医師を送りだしてから、長平は放二を見舞って、
「あんまりガンコに、ひとりぎめに諦めちゃアいけないぜ。ノンビリとノンキな気持になるがいい」
放二は童子のようにニコニコして、
「ぼくは、ノンビリと、ノンキな気持なんです。すべてに、満足しています」
「そうか。それに越したことはない。ぼくは東京にいるあいだ、ルミ子の部屋に泊っているから、用があったり、話相手が欲しいときには、よびによこしたまえ」
放二は、又、童子のようにニコニコした。そして、うなずいた。
「先生、ぼくに看護婦をつけて下さるんですッて?」
「そうだよ。なれた者でなくちゃア、寝たきりの病人は扱えないものだよ」
放二はうなずいて、
「それは、ありがたいのです。なれない女の子たちに、メンドウをかけるのは、気がひけていたのです。ですが、宿なしの女の子たちを、この部屋から追いださないで下さい。先生が気をきかせて下さって、あの子たちに他の部屋を世話して下さっても、こまるんです。あの子たちの身上は自由なんです。ここにいるのも、ここを去るのも、あの子たちの自由にまかせて下さい」
二
長平はルミ子の部屋へ泊りこむことになって、よいことをしたと思った。こんなに虚心坦懐に、女にもてなされたり、女を愛したりして、深間の感情というものをまじえずに、淡々とくらせるのが、ありがたい。ルミ子は魔性というものが少しもなくて、そのくせ、生れつきの娼婦というのかも知れなかった。
ルミ子は長平から放二のよろこびそうな新刊書をきいて、それを買ってきて、一日中、放二に読んできかせていた。放二が疲れたりねむったりすると、自分の部屋へ戻ってきて、長平の邪魔にならないように、
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