ルミ子というパンパンが知らせてくれたんだよ」
青木は手紙を読んだ。簡単な文面だった。放二が病床について、四十度の熱がつゞいている。入院をすすめても、きいてくれない。入院の費用で困っているわけではなく、放二の頑固なのに困っているだけだが、入院して充分の手当をうけるようにすすめてくれないか、という依頼であった。
「ぼくは明朝上京するが、君は、ここにブラブラしていても、かまわないぜ」
「イヤ。ぼくも上京しよう。おもしろいことになりそうだ。君は主として北川君を見舞うらしいが、ぼくは記代子さんを見舞うとしよう。しかし、なア、長さんや。記代子さんが重病で放浪の旅から戻ってきてもビクともしないという心事も分るには分るが、北川君の病床には駈けつける。これも分るには分るが、一考を要するところだろうと思うね。アマノジャクでもあるし、理に偏してもいる」
長平の答えはなかった。青木はやや苦笑して、
「フン。よかろう。タヌキかトラか、ただのネズミか知らないが、オレは長さんの正体を見とどけるのがタノシミさ。オレが来年も生きているとしたら、ミレンのせいではなくて、長さんの正体を見とどけたい一心だと思ってくれよ」
明るい部屋
一
放二のやつれ方はひどかった。
長平は知人の医師をともなって診てもらったが、ルミ子の部屋へしりぞいて話をきくと、彼は放二を生かそうとする情熱を起そうとしなかった。
「いますぐ入院というわけにはいきませんよ。うごかすと、死期を早めるだけのことです。三四日手当をしてみて、多少力がついたとき、病院へうつすことはできるかも知れませんが、どっちみち、長い命ではありません」
「どれぐらいの命ですか」
「うまくいって、二三週間」
「百に一ツも、望めませんか」
「百パーセントです。ここまできては、奇蹟は考えられません」
「会ったり、話を交したりしない方がよろしいですね」
「そう。ですが、どっちみち助からないイノチですから、親しい方々が心おきなく話を交しておかれることを止めるべきではないと思いますね」
ルミ子は医師の冷淡な言い方があきたらないらしく、
「十分か十五分ぐらいの診察で、どうしても助からないなんてことが、ハッキリ分るんですか。そんなにハッキリ言いきるほど、自信がおありなんですか。診たて違いということが、よくあるでしょう。百パーセント死ぬな
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