体的に夫々《それぞれ》御回答|煩度《わずらわしたく》及照会候也
[#ここで字下げ終わり]

         記

[#ここから2字下げ]
┏━━━━━┯━━━━━━┯━━━━━┓
┃葡萄糖回数│病名    │患者氏名 ┃
┠─────┼──────┼─────┨
┃    七│流行性肝臓炎│黒堀八重子┃
┃   二〇│ 〃    │黒堀多吉 ┃
┃    九│ 〃    │落合芳太郎┃
┃   二六│ 〃    │赤木りと ┃
┃    四│ 〃    │炭山八五郎┃
┃   一二│ 〃    │太田太郎 ┃
┃    三│ 〃    │木崎玉太郎┃
┗━━━━━┷━━━━━━┷━━━━━┛
[#ここで字下げ終わり]

 先生はこれを見て気を悪くした。肝臓に葡萄糖を注射するのは当り前のことなのである。どの医者だってそうする筈だし、かりにも国民健康保険の係員ともあろう者が、それを知らない筈はありえない。それだのに、右注射使用の理由を具体的にそれぞれ回答しろとは、ワケのわからないこと、おびただしい。
 まるで先生の医学知識を疑っているのか、さもなければ、不正をはたらいていると考えている詰
前へ 次へ
全49ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング