れが身につかない。姐御は本気で怒るが、通家は本気で怒れないから、論争の百ぺんもつづけてごらん。由起しげ子嬢が勝ちます。怒りッぷりが、キゼンとして、自分勝手で、ミジンも相手をカンベンしないもの。
通人通家は友だちを大事にする。ただ友だちであるために、である。人情によって、そうである。そして、友だちのカタキを憎む。友だちのカタキであるために、である。世にカタキほど可愛いものはないという。友だちの秘中の心事は案外そうであったかも知れない。しかし、そこまで目をとどかせる必要はない。通人ぐらい、目のとどかぬものはない。人情によって、故障だらけだ。
「トマサンの一生」なる小説は、まことに、故障だらけである。一読、抱腹絶倒。だって、そうじゃないか。チンピラ女学生の、ネバア・ハップンまがいの密書を読んで心機顛倒、恋女房たるその姉さんを離婚するとは、トマサンも大人げない。オオ・ミステイクの山際君でも、もっと大人ですよ。ネバア・ハップンの女学生が芥川賞の女流作家になり、「警視総監の笑ひ」という手前勝手なチンピラ小説を発表したところ、それがトマさんを殺す兇器となったという。
オオ・ミステイク先生はジャッ
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