て幻滅的で少くとも人生の幸福という主題にだんだん懐疑的になってきました。それで努めて外では反比例的に明るく人と交るという習性になってきました。そこには非常に人間的な努力と苦悶がありました。併し僕は人が良く云うニヒリストとかデカダンスにかぶれたことはないのですが、反面とても淋しかったと云う事実は否めない事でした。もちろんぼくも同年輩の男たちと同様ガールフレンドを持ち、リーベとよべる仲になったこともあります[#「リーベとよべる仲になったこともあります」に傍点]。しかしぼくは内省して見ると考える事は大人びた事を考えても所せん体形(系)づけられた行動は矢張り子供の域を脱し得なかったのです」(傍点筆者)
平々凡々たる家庭に育った、ということを述べるに、特に「他人から見れば」とことわってあるのが注目に価する。この手記全体からもうかがえるが、彼は、自分の主観と、他人が見た場合とのケジメが大そうハッキリしており、彼の考えばいつも一応そこにこだわるのである。つまり彼の人生では、人が自分をどう見るか、ということ、人にどう見られているか、ということが、いつも主たる関心事であったのである。
このことは、彼
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