主観も入って居たかも知れません」に傍点]。そうして僕達は互の心を探り合いました。二人の気持は変らないと云うのが話した後の結果でした」
 彼は愛人の父を見て逃げだしたのを「思いだすさえ不潔感でぞッとするような破廉恥なことだ」と語っている。しかし「自分のしたことの罪悪感にかられ」彼女の父の顔を再び見る勇気がなかった。罪悪感とは彼女の処女を奪ったことだろうと思う。
 彼は前節に「ぼくも同年輩の男たちと同様ガールフレンドを持ち、リーベと呼べる仲になったこともあります」と、明確にガールフレンドとリーベを区別している。そしてリーベになったというのは肉体的な交渉をもつに至ったガールフレンドという意味であるらしい。
 しかし、それにつづいて「考えは大人びていても所詮行動は子供の域を脱し得なかった」と告白しているのは、男女関係についてマセた考えをもっていたが、所詮大したことはできなかった、リーベは何人もいたわけではなく、人が見るほど悪いことはしていない、という自己弁護の意味であろうと思う。しかし、直接自己弁護の言い方で語られていないだけ、この表現には実感がある。つまり、彼、自ら広言するほど身持ちは良くな
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