よい作品を愛すだけだ。
私のところへ原稿を送ってよこして、批評をサイソクするのも、やめなさい。返事がなければ、落第だと思うべし。しかし、私に会いに来たもうな。すでに書いたように、私は人に会いたくないのだ。会っても、なんの役にたつような教師の資格をもった人間でもない。私から学びたければ、私の書いたものをよんで、自分勝手に会得することだ。
私は誰にも会わないが、素質ある人を見出すことを忘れてはいないのだから。そして、私に似ているものを、よろこびはしないのだから。
三島由紀夫をなぜ芥川賞にしないのか、と云って、私のところへ抗議をよこした人がある。事情を知らない人々には、まことに尤もな抗議であるから、この機会に釈明に及んでおくが、三島君は芥川賞復活当時、すでに多くの職業雑誌に作品をのせ、立派に一人前に通用していたから、すでに既成作家と認め、芥川賞をやるに及ばぬ、という意見に全員一致していたからである。
私が意外の感にうたれたのは、戦後派賞という戦後派の人を選者にした賞で、島尾君が賞をうけたのは、それはそれでよろしいのだが、次席として、三島君の名を明記するに至っては、私は呆れはてた。
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