すから、さッそくお出かけになったがよろしいでしょう」
 そこで女房は出かけて行ったが、血液検査は例によってマイナスである。しかし、子宮後屈で、お産がむつかしいと云う。私と一しょになってのち、盲腸で手術した結果だそうだ。
「子供を生みたいと思いますか」
 婦人科の先生は、女房にこうきいた。
「生みたいのです」
 女房はそう答えた。
「ムリかも知れませんが、当分、一週に一度ずつ来てみなさい」
 との話であったそうだ。
 私はその話をきいてるウチに、なんだいバカバカしい、というような気持になった。張りつめたものが弛んだようであった。私は、ダタイさせない、という気持に、こだわっていたのかも知れない。そんなコダワリがあったようには思われないが、張りつめた気が弛んだ時には、そんな気がした。
 色々の取越苦労もナンセンスである。
 私の気持は素直になった。
「さッそく東京へ行って、南雲さんにみてもらうんだね。たぶん、同じ診断だろう。同じ診断だったら、さッそく手術をうけることだ。一日も早い方がいい」
 女房も、その気持であった。女房は、東京ではズッと南雲さんに診てもらっており、信頼しきっていた。私も、
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