。何を云うのよ」
「人手に加工された跡が歴然としていて、なじめないし、可愛げが感じられないのだ。コマッチャクレているよ」
「そんなこと云うのは、可哀そうよ。あの子の罪じゃなくってよ」
 女房は、いささか、色をなして叫んだ。
 過去に起ったそれらの事どもを通観して、私のもとで生れた子供なら、私が案外喜んで育てるだろうことを女房は見ていたのかも知れない。私自身はどうかと云えば、万事生れてみなければ分らない。目下の状態としては、生れるものは仕方がないというアキラメだけであった。ごくワズカに、自分の子供ならうれしいかも知れない、という気持が、探してみれば突きとめることが出来る程度に、存在するだけであった。
 そして、もしも自分の子供であるとすれば、私の怖れたことは、子供に遺伝するかも知れぬクサグサの事どもであった。
 私は昨年から、毎日、天城先生に健康診断していただき、ブドウ糖とビタミンBの注射をうっていただいていた。
 私は天城さんに相談した。
「女房がニンシンしたようですが、生れてくる子供を、生れぬ先に、病毒から救う方法がありますか」
「ええ、ありますとも。婦人科の先生にレンラクしておきま
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