めにパンパンがきています。先生の御所望ならば、なぐられてもいゝと云っていますよ」
 先生は再びビックリしたらしく、パンパンをさがして見廻した。元々先生はひどい近視で、おまけにメガネをかけていないせいもあってハッキリしたパンパンの像をとらえることができないようであった。
 不幸なことがおこった。学生たちには分らなかったが、先生はパンパンを逃げた奥さんに思い違えたに相違ない。先生は手をさしのばして、虚空をさがした。苛々《いらいら》した顔は次第に悲しく沈んだ。
「オノレ、やっぱり、パンパンか」
 先生の呻きは、沈痛であった。
 学生は益々見るに堪えかねて、ソワソワした。
「先生、パンパンは、あやまりに来ました。そうです。パンパンの罪ですよ。思いをとげて下さい。それは大切なことだと思います」
 そして、学生はパンパンに、うながした。一人のパンパンは尻ごみの代わりにもはや堪らなくなって、ゲタゲタ笑い出した。
 一人のパンパンも仕方なしに笑いだしたが、彼女は気立てがよかったから、急に思いきった顔をつくると、気の毒な病人の枕元へにじりよって、病人の手をにぎり、顔をよせて、さゝやいた。
「私が悪かった
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