の先を云ふ。してみれば、未来は必ず存在しなけれはならぬ様に思はれる。が、しかし再三云ふ如く是も亦、「時間を仮定ししかる後意識を規定せんとする誤解」に本づく。前述の如く「唯一の力」は何者にも規定されない。あくまでも全てを規定すべきものが「唯一の力」である。しかし、此の未来を「力なき対象」として過去(即ち対象)に属せしめる以上は未来を時間としての意味でなく、意識の対象としての意味に於て見てゐるといふことに就て再考する必要がある。いはゆる「予想せられたる未来」として前来これを一つの意識対象に取り扱つて来たことは、結局「予想せられたる未来」が単に未来に就ての意識であるに止つて、たとへ我々が明日のこと十年百年以後のことを予想し得るにしたところで「現在意識しつゝある力」にとつてはあくまで只「意識せられたもの」であるにすぎないといふのである。
しからば前来説明してきた現在と過去との関係は、「力」なるが故に現在であり、力によつて「はたらかれる」ものである故に過去であるといふことであり、従て、過去と現在とは「主」と「客」との相違に本づく区分であるといふことに気付くであらう。要するに未来を除去したことは
前へ
次へ
全11ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング