仮定し後に力を規定せんとする誤つた見方」である。
 何者、「意識シツツアル力」に於ては「予想スル未来」そのものが既に意識の対象である。従て「予想スル未来」は単に過去にすぎない。換言すれば、我々が未来として予想することは単に予想「セラレタ」ものなのである。「セラレタル」対象にすぎないのである。現在「意識シツツアル力」に「意識せられた」未来といふ[#「未来といふ」に傍点]一つの意識内容に止る。従て之も又「シツツアル力」の現在に対する「セラレタル」過去以外の何者でもない。故に「意識しつゝある世界」に於て「シツツアル力」の現在と一切の「セラレタルモノ」の過去の外は何者もない。

   五、結論、再び過去に就て

 前節に於て我々の意識は未来を除去した。併《しかしなが》ら「過ギ去リタル意識」を過去として許す意味に於ては、当然、現在より先にあるべき「意識のはたらき」を未来と名づくべきではあるまいか、といふ疑問に達する。前節に於ては「予想(意識)セラレタル未来」は過去に属すと説明した。しかし是は甚だしい矛盾を含む様に思はれる。世の一般に従へば、未来と過去とは明に異る。過去は現在以前を云ひ、未来は現在
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