名をなしたというのは、人相骨相に根拠があって判明したのですか。もしそうなら教えてもらいたいものだ。しかし思うに、桜井さんは諸般の依頼条件から考えて、写真の主を戦後派と見ての推断ではないかと思う。そして、そのようにして推断し、誤りがなかったということは、彼の易断が相当健全な常識の上に立っていると見ることができ、私はその方を信用するのである。私は神ガカリ的な易断や、邪教的な暗示ぶりをとらないのである。
性格として、外によく、内に悪い、というのは、当っているが、しかし、これは当るのが当然だろう。まア人間の九割ぐらいは、外によく内に悪いのが当然だし、特に頭を使う商売や人間関係の複雑な世界に政策商略的な生き方をしなければならない人間は、外によく、内に悪いのが自然で、内に悪いのが一種の休息と目してよかろう。気を使わずにワガママにふるまえるのは自宅だけで、内に悪いというのは、自分のウチだけは安心して自分のもの自分の世界だという気持の現れで、内に悪い方が親しさのアカシと見た方がよい。
本当に仲がわるくて内にわるいのは、外によく内にわるい、という意味の正当なことではなくて、異例のことだ。内に辛く当る
前へ
次へ
全28ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング