現に必死に相闘いつつあるから相手は敵であり、そのために必死に闘わねば相ならん。その時さすがにデンスケ君は自分の駄犬をソッと陰に隠すようにしながら喧嘩の一団をはなれてトラックへあがると、ゴールめがけて抜け駈けをやる。と、デンスケ君よりも頭のよい山際さんがオーミステイクと云って先に走っているから、デンスケ君は死に物ぐるいに追走してゴールインとともに山際さんにムシャブリついて小僧同志の大乱闘となる。犬の先手をうつような闘争的な小僧さんなども現れるな。しかし、ここまではレースを行う選手の側の話である。
以上のレース経過をたどって、山際さんの犬とデンスケの犬で連勝式一二着と相なったが、本命の魚屋と対抗の八百屋と、その他の入賞候補の注意犬がみんなダシぬかれて負けてしまい、一番名もない駄犬が一二着。見物人はオーミステイクと云って済ますことができんというので、方々に火をつけて大変な騒ぎになる。
日本犬というものはダラシがなくって、主人が居てくれないと一犬前に喧嘩もできない弱虫だから大したことはないが、シェパードのレース中にこんな騒ぎが起ると、見物人もイノチガケですよ。
日本犬も訓練次第で、いつか
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