からは当然の事である。此の要望は国会では取上げられず競輪は再開したが昨年一月から九月迄に四十七件起った警察沙汰は再開後の五ヶ月間に三件に減って居り、要望の効果だけはあった様で、四月の公安委大会には議題とならず一応静観の姿である。
 宝くじ、競馬、競輪の様な公認賭博的なものに就ては公安委員としてよりは寧ろ一般国民の一人として検討すべきもので、可否いずれの側にも多くの議論が成立するであろう。是等のかけごとは戦前ヨーロッパではいずれもなかなか盛であり皆が人間通有の賭博的興味? を大いに楽しんで居た事は筆者も目撃して来て居る。然し文明国でやって居るから其のまま日本でもやるべしと云う結論にはならぬかも知れない。と云うのは欧洲の此種競技場では昨年の競輪騒ぎの様な警察沙汰の起ったのを殆んど聞かない。日本での運営方法が悪く観衆の賭博神経を刺戟し過ぎると云う事があるかも知れぬ。或は国民の教養節度が低く、こうした競技を楽しむ資格が無いと云う事かも知れぬ。若しそうとすればそんな国民にはまだ早過ぎる。幼児に花火を持たせる様なものだと云う事になる。いずれにしても競技の為に白昼公衆の面前で、放火、強盗、殺人、傷害
前へ 次へ
全46ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング