分が公安委員として呼出され、意見を求められた際、積極的に反対しなかった為にある新聞にひどく叩かれたと云う事があった。昨年競輪廃止の要望決議を提出した自分が、競輪同様に賭博的なドッグレースに反対せぬのは怪しからんと云う云分であった様である。是には二つの間違があったので、其第一は当時自分が会長をして居た犬の協会から、自分の知らぬ間に会長名で請願書が出て居た事と、第二は昨年の競輪廃止の要望の理由は「治安上害がある」と云う事で賭博的である事は要望書には一つもなく、従って宝くじ、競馬、オートレース等には触れず競輪だけに反対したのであったが、其点が一部の誤解を招いた事である。公安委員の自分が競犬法の請願人になる等と云う事は自分でも呆れた位だから、事情を知らない記者が公憤を感じるのは無理も無いのである。然し公憤のあまり筆が走り過ぎてか、自分の発言を相当に歪曲して書いた事実はジャーナリズムには時には有りがちの事だが、自分としては甚だ迷惑で、其の事情は自分が東京新聞(五月卅一日)に書いた通りである。廃止の要望に国警公安委大会の決議で「治安を乱し、青少年が犯罪を犯す」点だけを取上げたのは公安委員と云う立場
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