はよく連れ歩きました。最初矢張り恥しくて、買物籠の中へしのばせて出たりしましたが、ダッコしていると、殊に女学生等寄って来て、気違いじゃないかしらって笑うんですの。でも、こんなに大事にしているんじゃないかと思ったら、この真剣さを笑う方が却って可笑しい位で、人の嘲笑なぞ問題にならなくなりました。新聞に出ても、どうこういう事はありません。毎日の日記もこの子の事で一杯です。
お人形に凝り出してから、みんな一様に苦しかった時代ですが、随分生活苦と闘いました。が、どうしても他の職につく気になれません。生計のお人形を造りながら、絵本や玩具で遊んでやるのに忙しい程です。お人形にも魂があると思いますので、、おろそかには造れません。お人形とこうしていると、辛い事もどこかへ消しとんで、一番幸福だという気がいたします。汚い人間の愛情より、私はこの子等への愛情で、私自身満たされて居ます。
今迄、度々結婚も奨められましたが、所詮男なんて我儘なものですから、私のお人形に対する気持なんぞ解って貰える筈もございません。異性への愛情と人形に対する愛とは別のものですが……。この子等をも含めて総てを包んでくれる人があった
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