もないとしたら、夫は只泣き寝入りの外はなく、妻はしたい放題[#「妻はしたい放題」に傍点]……と云わねばなりません。とすれば、自由民主主義下の現代道義はどうして維持するのでしょうか? それでは、自分勝手ばかりで他人の迷惑など吾れ関せずのアプレゲール流こそ処世の常道の世の中となるではありませんか。それで法的に打つ手がないということは、凡そ締め括りのつかぬ世の中になったものです。何とか制裁の途はありませんか。序《ついで》ながら、右の事態から云えば、夫が妻以外の婦人を愛し、別に生活を持つとしても『自分の独立した意志』なら御勝手次第「妻から離婚を求むるは兎も角として」と云う事になりますが、果して法的制約の途はありませんでしょうか。
又、『自分の独立した意志』が尊重される結果なら、生活困難な親を顧みない子も制約出来ないのでしょうか。如何でしょう。
[#ここで字下げ終わり]
さて、これはさる新聞の身の上相談欄にでたものだそうで、第一が投書、次が新聞の先生のお答、次がそのお答に不満の投書者の手記で、私はこの第三番目の手記について見解をのべることになっていますが、どういう見解をのべても彼が満足する
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