とは思いません。
 私は田舎住いですが、東京の新聞は、まアだいたい読んでおります。しかし、新聞の身の上相談というところは、ここ二三年、読んだことがありません。新聞の紙面のうちで、この欄が私には一番ツマランところですが、自分で一番ツマランことだと思っているのと同じことを自分がやろうというのだから、私は実にツマラン人物の見本のようなものですな。
 しかし、身の上相談がどうしてツマランかということを、この投書がハッキリ証明していると思います。先生のお答は、別に上出来なところもありませんが、まアこんなことでも云う以外に仕方がないでしょうね。しかし、こういうお答によって、決して事件が解決して投書家の新生活のカギになるようなことはないでしょう。なぜなら、こういう実生活上の人間関係は論理的にはどうにもならんです。ごらんなさい。この男子は、男女同権、人権とか自由とか、そういう基本的なことを全然考えておりません。妻の不貞に制裁を加えることができず、妻の自由意志なら芸者になったのも仕方なしと泣寝入りせざるを得んのが民主時代なら一家心中かムリ心中したくなるのが当然だと彼は怒っております。
 要するにどんな大
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