ママゴト以上に魂のこもったところはありません。子供のママゴトにはまだ救いがあるなア。この人のママゴトは本当の食べ物を人形の口まで持ってゆくようなリアルなことをやって、それでオシッコなんて、ちょッと、私は助からん気持でした。
 人形が好きで、人形と一しょに生きてるような人は、きっと、もっと外にホンモノが実在するだろうと思うね。こういうママゴトなどは全然やらずに、本当に人形の魂と自分の魂とで話し合っているような生活が。大人が本当に人形を愛したという場合はそういう魂の問題ですが、この人の場合は、完全に子供のママゴトで、それ以上の何物でもないでしょうな。
 まア、しかし、一生涯、ママゴトをして終るというのも結構でしょう。

     芸者になった人妻の話  河口耕三(卅八歳)

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「妻が夫に無断で夫の許を離れ芸者になったのは、『自分の独立した意志』でなったのだから法律ではこれは取締れない」となれば、啻《ただ》に芸者になった場合に限らず、妻のどんな行為も実は傍観する外はない結論となります。
 結局、妻が……現在の生活に一種の満足感から、夫の反省を求むる言葉など顧みず再考の色
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