るし。サンチョ・パンサじゃないが、事に当って格言コトワザの類を思いだすと、人生はわりあい平和ですよ。
私も新聞記者にはずいぶん悩まされたね。精神病院の鉄格子の中まで猛然突貫しようという猛者は、新聞記者のほかにはないね。社会部記者の心臓は大変だ。無礼、粗雑。野武士、山賊。実に手ごわい存在ですよ。もっとも彼らにも同情すべき点はある。たいがい人の不幸の時に会見すべき宿命にあるから、どうしてもイヤがられる。あなたや私は、電車にやかれてヤケドするとか、気が違った時でもないと、彼らは会見に来てくれない。あなたが結婚したり安産して喜んでいる時に会見にきてくれるショウバイじゃないのです。彼らが結婚のよろこび中の人物に会見を申しこむのはタカツカサ和子さんと平通サンぐらいのものだ。人間というものはゼイタクなもので、結婚式のオメデタに新聞記者が会見を申込むのは自分たちぐらいのものだという結構な身分であるのに、やっぱり新聞記者はウルサイ奴だ、と云って怒っていらッしゃる。全然新聞記者は助からないのである。人が半殺しにされた時は、エエ、御心境は? とききに行かざるを得んという実に宿命的な悪役であるから、あなたも
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