イノチが助かったことに免じて許してやるのですな。彼らが鉄格子の中へ突貫してきた時には私も怒りましたよ。しかし、どうも、人生には誰か間の悪い奴が存在しなければならないのだから、自分が間の悪いことになった時には、仕方がないのだね。私は大いに怒って新聞記者を殴らんばかりであったが、しかし、実のところ、あなたが顔の痛いのを我慢して、口惜し残念と新聞記者を呪いつつ語った記事を、私はいと面白く読むんですな。キチガイ安吾、怒り暴れつつ曰く、というような悲痛な記事を、あなたをはじめ世間の人々はゲラゲラたのしんで読むんだから、仕方がない。あきらめなさい。
しかし、話をきかせて下さい、自動車で東京へ送ってあげるから、とはヒドイ奴ですね。銀座でその新聞記者めに出会ったら、すれちがう紳士からライターをかり、奴めの洋服に火をつけてカチカチ山にしてやりなさい。そうして半死半生になって辛くも火を消した時に、
「エエッと。御心境をきかせて下さい。ちょッとで、いいわ。トラックで社へ送ってあげる」
鉛筆をなめながら、そういうのです。奴メは怒って、あなたに組みつきやしませんから。新聞記者という動物は、商売の時と酔っ払っ
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