ら、無数の女給が街頭に林立してひしめくことはなかろうさ。だいたいあの客は風態がよくない、とくらア。実に痛快な言葉だね。はじめて現れた風態のよくない客に、注文に応じて、怖る怖る七万四千七百円の品物を出したというが、怖る怖る七万四千七百円だすという手品使いがいるんだねえ。こんなお人よしの手品使いに三日間でも飲食店のマネジャーが勤まったらフシギだね。このセチ辛い世の中に生きているのがフシギさ。
 マネジャー氏の痛快すぎる言い方に対しては私は甚だ反感を覚えるけれども、女給が街頭へ現れて客をひくような商法の店ではカモをオメ/\逃す筈はなかろう。彼氏の店だけのことではなく、客ひきをやる店はみんな同じ山賊商法と心得てマチガイはなかろう。ただ程度を心得てる店と、そうでない店があるだけのことであろう。
 ここに山賊ありと心得たら、近づいてはいけないね。山賊に近づく以上は、してやられても仕方がないという覚悟がいるのだ。
 昔から講談などにもよくあることだが、主家の集金の帰りなどに、バクチに手をだしたり女にひっかかったりして身を亡す。集金に旅立つに先立って、主人とか父母とかが、お前はふだんはマジメでマチガイ
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