たんです。
渋谷宇田川町、サロン春のマネージャーは語る
ボッたなんて、とんでもない。大体、あの人は風態がよくない。こんなところへ来るようなタイプではなかったようです。女給だって、引っぱっちゃ、いませんよ。あんな客は相手にしません、むこうから、「遊ばせてくれ」ともちかけてきたんです。だから、三十万もっているの何のと強がっていたんですが、どうも信用ができない。恐る恐る出してたほどです。それでもキャッチになるんですからね。街頭に立つのが、そも/\いけないというのです。
勘定はきちんとしています。それは公安委員会でお客も認めています。帰ると、その足で、交番へ行ったんですからね。卑怯なお客です。後味が悪いですよ。
近頃はタチの悪い客が多くなりましたよ。散々のんでから、「キャッチしたじゃないか、警察へ行こう」って調子、こっちは弱い立場ですからね。キャッチに出なければ、商売にならない状態なんです。しかし女給のすじはいゝんです。有夫が三割、未亡人が二割、あとは独身ですが親を養ったり、兄弟を学校へやったりする感心な人が多く、みんな生活のためですよ。悪どいことをするという話も聞かないではありませ
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