なく検事が現れて、ワイセツ文書ハンプの罪というカドによって越前守がからめとられてしまう。クワバラ。クワバラ。
一晩に七万四千円飲んだか飲まないかという話
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新興喫茶でボラれたという杉山博保(三十一歳)の話
いや、おどろきましたね、七万四千七百円の請求をされた時には。七千四百七十円の間違いかと思って、何度も見なおしました。せいぜい二十本ものんだかなと思っていましたからね。酔うと、大体が気が大きくなる方で、威勢よく注文したことはしたんですが、酒が六十六本、ビール七十八本、お通し六十三人前、イセエビ五皿、タコ二十八人前、マグロサシミ二十五人前、果物五皿、シャンペン一本、スシ十人前、それにサービス料二割――
仕方がない、はらいましたよ。なにしろ、現ナマはもっていたんですからね。だが、酔いも消しとんじまいました。自分の金じゃなし、しがない古衣商、それもお客からあずかった金でした、どうやって返そうかと思うと気が滅入るばかり、シャクにさわってならない。そこで、駅前の交番へ、かくかくと訴えたわけです。自分から入ったわけじゃなし――そうです、渋谷駅前で引っぱられ
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