た感じ。まことに至純なメルヘンの世界である。少年の落胆が甚しいので、そんなに思いつめているなら結婚させようと母親は考えるが、オレがまだ結婚しないのにと二十の兄が反対し、父親も兄の言葉に同意見である。十六という年齢が結婚に早すぎるというのは万人がそう考えるのが常識であろう。理につく男親がその常識に従うのも当然。しかし母親が常識を度外視して、そんなに思いつめているなら結婚させたいと考えたのは、いかにも溺愛に盲いがちな母親らしい自然さでもあり、両親の気持のくいちがいや論争など、浄ルリのサワリになるところであろう。
童話と浄ルリの中の少年が家人とケンカして家出すると、唐突に話が汚くなってパンパンを買うことになるのが現代風だ。家出あるいは自殺というアンタンたる出発に護身用のジャックナイフを持ったというのは頷けないことではない。自殺に行くのに護身用は妙なようだが、自殺も他殺も同じようなもの、諸事アンタンとして気持が悲愴で荒々しく悲しい時には、自殺も家出も道に待ち伏せているかも知れぬオイハギ山賊妖怪もみんな一しょくたで、悲愴な気持の中には不安や苦痛な悪いことがみんな含まれていて一ツだけ分離されてい
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