しようと決心したのです。どこでだって暮せる、死んだっていゝと思ったのです。
 学校の月謝と正月の小遣い二千五百円と、去年の暮、護身用に買っておいたジャックナイフをポケットに、午後三時頃、家をとび出しました。途中新宿で降り、最後だからと思って映画を見ました。「女賊と判官」というのです。映画館を出るとピースを買ってのんだが、うまくなかった。
 あてがないので、新宿駅の西口附近をぼんやり歩いていたら、若い男が、
「いゝ女がいるから遊んで行かないか」
 と話しかけできました。最後だから、女を知りたいと思いました。すると、その男が連れてきたのが、あの男なのでした。
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 この手記の筋を用いて童話ならできるだろう。少年が死出のミヤゲにパンパンを買いに行ったり、オカマが現れたり、大そう汚い童話だが、ストリンドベルヒ流の童話にはなるようだ。
 十六の少年が疎開中に遊んだ村の娘、そのころ二人は十未満でしょうが、少年はその女の子が忘れられずに、村へ訪ねて行きますが、その子の家はもうないので、落胆してしまいます。
 この辺は「たけくらべ」の恋情を、ムッシュウ・スガンの山羊の素直さにし
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