うことだ。大人は化け物ばかりだよ。君も化け物になるであろうが、大化け物になる素質はないようだ。

     第二話 カゴヌケした娘の話  山口公子(二十歳)

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 ジミーと知り合ったのは、ホテルに勤務している頃で、二世だと自分でいっていました。私に対する好意を率直に表わし、親切にしてくれました。
 二十歳の今日までの私の生活は、何不自由のないものでした。むしろ、両親から甘やかされ、我儘一ぱいに育てられた方だと、自分でも思います。でも、父も母も、私が年頃になると、私の行動に、とても神経質になり、うるさく干渉しはじめました。私が両親を説いて、ホテルに勤めるようになったのも、そんな重苦しい家庭の空気が、いやでたまらず、自由な社会へ出たかったからです。
 だから、ジミーに対しては、別に恋愛感情など、なかったのですが、彼との交際は、私には救いでした。すべてが愉しかった。
 遊ぶといっても、私はダンスなどできませんでしたから、銀座を歩いたり、映画を見たり、レストランへ入ったりするくらいなものでした。
 でも、鎌倉の家には、毎晩きちんと帰りました。父は夜は八時を門限ときめていま
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