した。遅れないように注意していましたが、ジミーと交際するようになってからは、その時間をすぎて帰宅することはしば/\ありました。その度に、父はひどく叱ります。不満でした。ちょっと映画を見ても、鎌倉まで帰ると、八時をすぎるのは当り前なんです。
家出したのは九月、その夜もジミーと一しょでした。気がついた時には、とっくに、八時をまわっていました。どうせ叱られる、覚悟をして、遅くまでジミーといました。
家へ着いたのは十時でした、戸がしまっていましたが、灯りはついていました。でも、父も母も、どうしても家へ入れてくれないのです。かっとなって駅へ引返しましたが、行く先のあてといっても、結局、ジミーのホテルよりほかはないのです。
その夜、ホテルで、ジミーにはじめて許しました。仕方がなかったのです。両親への反抗だったかも知れません。それに、彼はとても親切でした。
それっきり、家へは帰りませんでした。一しょに暮しているうちに、ジミーは二世の貿易商だといっていましたが、本名は新仏典儀といゝ、広島に父母もあることがわかってきました。でも、ジミーはお金を沢山もっていたし、本当に愉しい日々でした。なんでも買
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