のを見て感じるのは、日本の家庭の暗さということで、婆さん連が浩然の気を養うのを咎めたいような気持は起らなかった。もっとも、ちょッと目をそむけずにはいられない、因果物的ではあった。
もう一つ、巷談に扱いたいと思っていて、できなかったのは、いわゆるアプレゲールなるものの生態である。果してアプレゲールという特殊な新人が誕生しているかどうか、小学、中学、高校、大学、山際的アンチャン連に至るまで、生態をしらべて御披露したいという大志をもっていた。これには先ず学校生活をつぶさに見て廻る必要がある。生徒たちの多くについて個々に知る必要もある。家庭の生活も知る必要がある。大志はいだいていたけれども、調査の面倒は大変だ。
第一、私には子供がない。全然手がかりがないわけであるから、その方が観察に新鮮味をそえる一利はあっても、調査の労力、時間というものが何倍となく要する。学校の教科書だって見る必要があるが、それについてもなんの知識もない。
これを巷談にあつかいたい気持は、今でも多分にあるけれども、課題が大きすぎて、一朝一夕で、まとめる見込みがないのである。簡単にやってやれないことはないが、手をぬきたく
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