人らしきものがいたり、ミイラのようなのがゴチャゴチャいたり、全然意味をなさぬ色と物体があったり、大部分が、とるにも足らぬコケオドシである。
 私が二科を見て最も痛切に思ったことは、審査風景を見たい、という一事であった。どんな理論を述べあって、これらの謎々の絵を入選させたり、落選させたりするか。イヤ、そこは教祖ぞろいのことであるから、黙々と微笑して膝をうち、以心伝心、満場一致するのかも知れん。
「二科三十五人像」といって、二科の三十五人の教祖をズラリと描いた十尺四方もある大作があった。チャンと教祖を祭るにソツはない。おサイセンやお花があがっている代りに努力賞というものが具えてあった。

          ★

「胃袋を大切にしなさい。胃袋を。大学をでる。役人になる。一週五回以上の鯨飲馬食に耐えねばならぬ。頭は必要ではない。中国、ニッポン、朝鮮。主として胃袋のぜい弱なる者は指導者の位置につけない国。頭を使うと胃ブクロへ行く血液がへる。危険。胃ブクロを使うと頭に行く血液がへる。安全。要するに頭を使うと不幸になる。だから、立派な部屋には、いつも胃ブクロがいる」(アサヒグラフ「魚眼レンズ」より
前へ 次へ
全16ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング